読売新聞ナンバー2のスキャンダル
『週刊文春』  

 今週取り上げるのは『週刊文春』2月6日号(1月30日発売)の「仰天スクープ ナベツネも知らない読売新聞の『特定秘密』」「"御庭番"山口専務が謎の女性に入れ揚げ 会社を私物化」という記事。

 山口寿一専務は、次期社長候補といわれる渡辺恒雄主筆の懐刀。社の情報はすべて彼のもとに集まる。
 山口氏が今の地位に上り詰めるのに大きなポイントとなったのが、法務部長時代に弁護士や警察当局と組んで、プロ野球から暴力団系私設応援団を追放したことだという。
 その時の協力者が「謎の女性」ことT夫人である。

 T夫人は、阪神タイガースの私設応援団員だった。
 タイガースには私設応援団がたくさんある。その中の「中虎連合会」は山口組系の関係者が仕切っていて、粗暴行為をくり返すだけでなく、ダフ行為や応援グッズ販売で金を稼ぎ、暴力団に環流させていた。
 T夫人は2004年に暴力団排除の専門家、猪狩敏郎弁護士のもとを訪れ、中虎連合会の幹部がタイガースの応援歌を作詞・作曲したと偽ってJASRACに登録して、違法に著作権使用料を受け取っていると相談した。
 これをもとに兵庫県警は中虎連合会の幹部を逮捕。事件がきっかけとなって野球の暴力団排除運動は加速した。
 その後、T夫人と山口氏は暴力排除のイベントでこの成功例を一緒に語るなど「二人の"盟友関係"はその後も続いていった」という。

 そして、事件は起こった。その詳細は週刊文春を買ってもらうほかはないが、要するにT夫人の個人的トラブルに、読売新聞が大きく関与し、しばしばその現場に山口氏も同席している、というものである。
 個人的トラブルとは、銀座に「銀座比内やコリドー店」を構えるM氏と、T夫人との店の経営権をめぐる争いである。
 M氏は、開店時に資産家のT氏に初期費用を肩代わりして貰った。店の利益の半分をT夫人が代表を勤める会社に支払うという約束で。
 最初は順調だったが、2011年ころから売り上げが減少しはじめ、そのころから二人の関係がこじれ始めた。

 2013年6月1日、T夫人は、店を大勢の人で封鎖するという挙に出た。そのとき、中に入れないように固めていた20人くらいの人の中に、読売新聞の「警視庁担当記者や司法担当記者」を経験した社員が複数入っていた。
 警察が出動する騒ぎとなり、通報したM氏側の従業員F氏がなぜか警察に連行されてしまう。(すぐに間違いということがわかり「すみませんでした」と言われ帰される)
 20人くらいいた人物の詳細は、読売新聞の社長室幹事や総務局に在籍している社員、兵庫県警OB、読売新聞の顧問弁護士など。彼らはF氏が連行される様子をビデオカメラで撮影した。

 6月13日、東京地裁はM氏側の主張を認め、T夫人による占有を解除させる決定を下した。
 同日、読売新聞本社に比内地鶏の生産者A氏が連れてこられた。その場にいたのは、T夫人のほかに顧問弁護士2名、そして山口氏など。彼らはA氏に、F氏がパトカーに乗せられる画像を見せ、「F氏は反社会勢力だから取引をやめて下さい」と迫った。
 A氏はこれを断る。
 その後も、Oと名のる読売新聞社会部の記者が秋田のA氏のもとを訪れ、取引中止を迫った。

 7月1日、読売新聞本社で、「銀座比内やコリドー店」の仕入先であるの「秋田比内や」の関係者の集会が開かれた。そこにも山口氏は参加していた。「F氏は暴力団ではないが乗っ取り屋の集団である」といったことが話された。

 F氏の言によると「被害届の相談で築地署に行った際、刑事から読売関係者らが『何とか(F氏を)暴力団周辺者とだけでも認めてくれないか』と頼みに来た(読売新聞グループ本社広報部は否定)が、『該当しないものを暴力団扱いすることはできない』と断ったと聞きました」という。
 事件は今も裁判で係争中である。

 記事の最後は次のように締めくくられている。
 「社会の公器たる新聞の大幹部が、恣意的に権力を使えば、シロのものをクロに変えることも可能かもしれない。だが、それはメディアにとって自殺行為である。」

 老害主筆が居座り続けると社内が淀み、こんな輩が側近として幅を利かすようになる、という分りやすい例である。

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